Brown B2-Acrobat

自作してみよう


4サイクル50クラス簡単な例題機で設計、製作の手順を公開します。きっと自作したくなりますよ。但し製作法に正解はありません、独自にアレンジしましょう。

<1、まずは思いいれから>

心に残る機体があればきっとどういう時代にどういう目的で開発され、運用されたか気になるものです。(この辺がスタントやさんとアプローチがまったく異なる)是非本屋さん、図書館、インターネットを駆使して調査しましょう。更に製作意欲が沸くと同時にディテールが見えてきます。
例えばドイツの誇るストール機フィーゼラーシュトルヒは固定スラット、長いサストラベルの無骨な脚、思いっきり張り出した視界のよい風防デザインなど滑走路を選ばないさながら空飛ぶジープのような必然から生まれたのです。ここまで知ってしまうと稼動サスにしたくなったりと危険な領域に入りますが、まだた易い方でしょうか。あまり凝ると完成しない場合あるので注意です。

<2、図面の入手>

 

例題機ブラウンB2はオリジナルスケール作品集で紹介しました。GeeBeeレーサーがマイナー中のメジャーならB2はマイナーXマイナーの部類に入る機体で、まず図面は簡単に手に入りません。左の航空ジャーナル79年3月号にレストア機のグラビアで発見しモデルリサーチジャパン(多分インターネットで見つかる)から以下のFAX図を入手しました。
精密図面を扱う図面雑誌(別冊航空情報など)やジェーン航空機年鑑などあればベストですが、プラモの簡易図でもOKです。

 

 

<3、スケールの決定>

まず図面をA4からA3程度に拡大コピーしましょう。
左はA3版のコピー図で、スケール定規(今時ないかもしれませんが1/200,1/300,1/500など6種が選べる)で欲しい全長に合うスケールを決めます。この定規を使えばそのまま図面から測定した寸法がR/C機の寸法になり便利。但しちょうど欲しいスケールにならない場合はコピー倍率を調整します(ちょっと面倒)。
もちろんスケールの決定には手持ちの、もしくはこの機体のためのエンジンサイズを考慮します。4サイクル50なら全長1100から1300mm程度ですが、決定のプロセスは様様でエンジン優先、収納優先(車での搬送性)、バルサ材など規格材長考慮などあるでしょうが、やはり作りたい大きさが初めにあると思います。

 

 


B2アクロの場合はバルサ長900mmを有効利用とFZ53で全長1110mm(スピナー含まず)と決定しました。

<4、設計コンセプト>

完全スケール(実機と相似形)ならコンセプトは確実に飛行することで、そのための軽量化構造、ディテール作りに徹すればOK。
B2アクロは近頃のスホーイ、エクストラなどの実機アクロバチックを多分に意識しているため、軽量化もそこそこに翼型にこだわりました。15%厚のエップラー475を18%に太らせ、より失速特性をピーキーなものに。(迎角大で失速に耐え、失速始めると急激)この翼型はアクロ機でしか通用しないやくざなもので、大パワーがなければ最悪のふざけたものといえます。
流行のアクロやりたいけどありきたりでは駄目で、かつすぐ飛ばしたい方へ送るB2アクロはスケールとはいえないくらい簡素化し毎週気軽に飛ばせるおもちゃです。

 

<5、設計>

スケールの場合セクション入力が結構面倒(デジタイザのようなものがあればベストでしょうが)なので直接図面に鉛筆書きし各寸法出ししています。量産するとかオリジナルデザインならCADがベストでしょう。私の場合自作は1機しかまず作らないので、@コピー拡大3面図A胴枠部品図B側板部品図Cエンジンマウント部品図D翼型図程度しか図面化しません。後は行き渡りばったりその都度現物合わせです。(設計が目的ではないので)

 

 

胴体

先ほどのコピー拡大側面図に基準線(エンジンスラストラインでも何でもOK)を引き、エンジンにあわせ最初の胴枠F1(防火壁)位置を決めます。次に主翼前縁F2、主翼中央F3、主翼後縁F4、後部F5の順に位置を決めますが間隔は強度の必要な前方は短く、きりのいい寸法にまとめます。
実機図面に断面図があれば極力利用しますがセミスケールと割り切れば円と直線の組み合わせが設計、製作とも楽で妥協できるレベルにアレンジします。(実機B2は側板直線ではなく淡い多角形のようです)
以下は胴枠設計のポイント。
@防火壁は強度重視ベニヤ4mm、エンジンマウントはサイドスラスト2〜3°、ダウンスラスト考慮(推力線と前面抗力中心ずれによるので一概に決められないがB2の場合、低翼で推力線が比較的上なのでダウンスラスト0°で十分)更にエンジン冷却のための風逃げを設定。
A燃料タンクを予め購入しておき(B2は260CC)外形を合わせる。(タンクチューブ上下位置はエンジンのキャブレター高さに極力合わせるがポンプ付きエンジンならフリー)
B防火壁から主翼後縁を超えるあたりまで側板補強のベニヤ3mmを入れる
C脚取り付け部は三角材など利用し十分補強(F1,F2の間)
D主翼取り付けダウエル、ウイングボルト部は肉抜き控えめに。
Eサーボなど搭載物を考慮して胴体幅決定

・主翼面積は最初から33dm2付近を想定し完成重量1800gの見積もりで翼面荷重55g/dm2と安全離着陸を確保。尾翼面積は尾翼容積算出(Vh0.6、Vh0.04程度)して求めるべきですが最近ズボラで実機よりやや大きめ適当に設定。
・上半角は片翼を密着させて反対側翼端20mm程度とした。これは経験則でこれ以上ではナイフエッジで起きるし、以下では旋回で巻き込み感が大きい。(矩形翼の場合であって、テーパー翼や後退翼の場合は幾分ロール安定側に寄る)
・構造は極めてオーソドックスな4mm角ヒノキスパー工法。ヒノキ材は根元で接着2重の4X8mm、上下ヒノキ材を連結するバルサ縦目桁材は1.5mmを翼根から翼端まで接着し完全な箱としねじり剛性を高める。
・翼型紙は大昔各セクションを電卓計算し厚紙にプロットしてた時代もありましたが、便利になりました、今は巨大サイト「ラジコン談話室」の翼型フリーウエア(難はプランク厚をマイナスできないことですが、時期アップされることでしょう)を利用させてもらってます。他に翼型セクションを欲しい翼弦にあわせエクセル計算しCADでプロットとか(めんどうですがプランク厚をオフセットできるメリットあり)またMACのイラストレーターもよさそうです。賢明な皆様はもっといい方法をご存知と思います。
設計まとめ
・基本は応力集中をなくすことと考えます。脚より受ける離着陸の衝撃、宙返りなどのGによる荷重がどの個所に伝達されるか想像しましょう。例えばエンジン周りは脚取り付け部など含め強度が必要で重くなります、しかるに主翼取り付け部は開口しておりこの境が応力集中するのです。同様に尾翼付け根、主尾翼中央などできれば均一梁で設計したいところですが、これも作業を考慮して適当にきりあげます。(ラジコン機は実機に比べ翼面荷重も低く強度過剰の産物なので50クラスくらいまでならつまんないですが適当が成り立つと思います)
・設計の本当に面白いところは空力と思いますが、スケール機でどうこういっても致し方ないでしょう。残念ながら実機の飛行特性が模型で反映されることは少ないので、翼型は実機にこだわらず製作しやすいフラットボトムやNACA00シリーズなどでも十分と思います。グライダーはその点設計も製作も繊細さが必要で、グライダーマニアの方にはかないません。
以上設計の参考にぜんぜんなってませんね。

 

 

<6、製作>

@胴枠切り出し(主に3mmシナベニヤを糸のこ盤にて)
A側板(3mmバルサ)切り出し、補強ベニヤ、三角材接着(予め胴枠接着位置のマーキング要)
Bリブ型紙でバルサにマーキングし切り出し(2mmバルサ)、虫ピンで重ね合わせてカンナ、ナイフで成形
C4角ヒノキスパー材2重補強接着

 

 

 

 

 

D胴枠を側板に(エンジン周りにエポキシ、その他は瞬間かセメダインCなど)で接着、ねじれ注意で各方向からチェックする。(既にサーボマウント接着)
E翼リブにスパー材、後縁材、前縁材(バルサ5mm)の順に瞬間接着剤で固定。モーメントの長い後縁材を先に固定するのがねじれの少ないポイント。

 

 

 

 

 

 

 

Fコクピット後方ファーストバックを10mm三角材で丸みに備える

 

 

 

 

 

 

 

G計器類ボードだけは木目きれいな薄板にクリヤニスで表現。これにアルチメーターなど計器を貼りつけワンポイントスケール観です。

 

 

 

 

 

 

 

H胴体上面の甲板張りはt2X9mm幅バルサ短冊にて。コクピット枠の切り出し準備

 

 

 

 

 

 

 

 

H今時プランクに洗濯ハサミやピンを使う化石のような私の工法。
野蛮にも錘(鉛玉)で微小ねじり下げを付ける。
表プランクは瞬間接着剤だが裏はセメダインCが好きなのです。

 

 

 

 

 

 

I翼端も思いっきり手を抜く

 

 

 

 

 

 

 

 

J尾翼に至ってはそのまま切り抜くだけ

 

 

 

 

 

 

 

 

Kサンディンングしてあっという間に生地完成。

カウリングはコードロン製作のとき失敗したものを修正して利用。

 

 

 

 

 

 

 

絹貼りしたい衝動を抑えてフィルムにてイージーに完成です

エンジン:YSFZ53
翼長:1440mm
全長:1130mm
重量:2200g
翼面積約34dm2
ラジオ:4CH

前述より重量増の原因はパイロット人形の分を差し引いても見込みの甘さとしかいいようありません。絹貼りのコードロンとほとんど同じとはちょっとがっかりですが、軽量化より作りやすさを重点に置いた設計としては致し方なし。少なくとも同クラスのキット、完成機よりは十分軽い部類でしょう。

 

 

 

 

 

<7、フライトインプレッション>

調子の悪いFZ53をなんとか始動し誘導路へ。
尾輪の効きは申し分なし。
フルスロットルで軽々離陸。
とにかくすべてが軽い感覚で、僅かな上半角にしては巻き込み感はなく練習機並の手軽さ。
早々に着陸も厚翼の性で減速は早いが、軽翼面荷重と厚翼の恩恵で失速の予感はまったくなしでソフトランディング。これまでに飛ばした機体のどれよりも普通飛行の緊張感がないのです。墜落の予感の少ない機体とでも言うのかな?
ナイフエッジはフルスロットルでなくとも上昇するのでナイフエッジ8の字は楽にできそう。
但し起きるどころかひっくり返る方向に回転するくせがあるので常にエルロン修正が必要。やはり上半角1度では少なすぎたかも知れない。
クイックロールレートがかなり速い感じを確認したところでエンジンチャンがいかれました。

飛ばしこめば相当遊べる予感を掴み連載終了と致します。

2001.05.26 飛行インプレ追加

エンジンの不調はヒコおやじさんのタペットクリアランス調整より大方改善し熟成飛行を100回以上こなし現在に至る。

ナイフエッジループまではできないがどこまででも伸び上昇するほどのナイフエッジはそのまま8の字旋回などOK。

ラムチェバック、タンブル、などエアロバチックの基本はすべて余裕でこなせる。但し上半角が少なすぎナイフエッジでは背面癖強く常にエルロンでカバー要。この辺はコンピュータープロポならラダー→エルロンミキシングでOKでしょうが、技でやりくりするのがコダワリ派の困ったところ。だって実機にはそんなからくりないでしょう。

軽さと余裕パワーの本機は厚翼とあいまってこてこてのエアロバチックになってしまったのでした。おわり

 

 

パイロットはお姉さんです。
ずいぶん前にモーターパラセールのラジコンが市販されましたが、それ用のオプションフィギュアです。

 

 

 

 

 

 

 

 

唯一ちょっとだけ凝ったのが計器板周り。
木目を生かしたニス塗りに市販の計器セットを貼りつけただけですが、それなりに話の種にになります。

やけに色白に光るのはお姉さんの生脚で、ほとんどのお客さんは計器板より先に目を奪われます。