BAe Sea Harrier


たプロップジェットとお嘆きでしょうが、我慢してして見てください。
ハリアーといえばイギリスの意地、20年近い歳月をかけとうとう実用化にこぎつけた唯一のV/STOL戦闘攻撃機。旧ソ連のフォージャーのような垂直上昇用と推進用とを分離した半端なものではなく、推力方向可変で強力なペガサスエンジンを駆るハリアーはアメリカでさえ成し得なかった。古くはX13,X14、XFV1、XFY−1ポゴ、ナットクラッカー、XFV12Aなどどれもこれも失敗の連続、とうとう米海兵隊はAV−8Aとしてハリアーを採用した。なかでも記憶に新しいフォークランド紛争で活躍したシーハリアーはデザインがよりクリーンで好ましい。
模型好き少年として飛行機に傾きはじめたきっかけがハリアー。F4などのメジャーを抑え、当時の航空FAN等には盛んに紹介されていたことを思い出す。自分ちの庭から離陸できる戦闘機なんて物騒だけど、いままで長大な滑走路から飛び立つ最新の戦闘機たちの影が薄く感じられ,お辞儀をしたり、バックしたりのパフォーマンスはど素人にもかっこよく奇異に映ったに違いない。
て、このR/CはVTOLできません。念のため。しかしながらハリアーの単なるセミスケールを作りつもりは毛頭無く、コンセプトはスロー&ファーストなのです。離陸は軽々短い滑走で、脚を引き込んでハイスピードパス、更に目の前を超スローでムサシノ機のように飛行できたらと考えます。発想は近頃のファンフライ、またラジオは軽くなり、小さくても高出力のエンジンが入手できるようになったこともきっかけといっていいでしょう。
そして本当の目的は前後縁フラップ効果の検証。なんていうと偉そうですがR/C機でただのフラップを下げても低レイノルズ数のためスポイラー効果しか多分期待できないでしょう、飾りとしてのフラップ採用には納得できないのです。しかしながらその効用にあこがれひそかにイメージをあたためていたのです。(この機体構想でアントノフAN-2の製作が頓挫してしまった)ゆっくり飛ぶにはうんと軽量にして大キャンバー揚力係数大の翼型を採用すればよいですがそれでは抗力大でハイスピード飛行へ移行できない。そこで前縁フラップを付加することでストール無く大迎角飛行を狙ったのです。


揚力装置のなかではスラット、スロッテッドフラップの組み合わせが最強ですが構造重量増加懸念で本設計では薄翼フラットボトムの前作JET1にも使用したゲッチンゲン564に極単純な前後縁フラップとした。操縦は初の試みのローリングスタビレーター採用(オールフライングではないのでこう呼んでいいのか?)し通常のエルロンエリアは全域後縁フラップとした。ポピュラーなフラッペロン方式は仮にエルロン→ラダーミキシングを追加しても(実機F4などの常套手段)、アドバーズドヨーが頭をよぎり踏切れなかった。
こんな盛りだくさんにエンジンはなんと15LA、目標重量900gですが果たして。
体側板2mmバルサ、胴枠2mm航空ベニヤ、角は15、10mm三角材で丸める単純工法、キャノピーは前作EF2000の型流用塩ビ板加工、主翼はリブ1.5mmバルサ、前、後縁材(実質の桁)を前後フラップ位置に配置し1.5mmフルプランク(翼根1.4で翼端1.1程度にサンディング)で完全な箱とし軽量ながら十分なねじり剛性を確保。
ノーズギヤーはロバート社のミニ、メインギヤは新発売のOK10用引き込み脚を採用して軽量に、引き込み脚と前後フラップはリトラクトサーボ1個で連動。そして胴体横腹に張り出すエアインテークは炭酸用ペットボトル容器利用でそれらしく表現。被覆はロイヤルネイビーカラーをフィルムにて〆て1kgなり

 

 

<スペック>

エンジン:OS15LA
全長:1050mm
全幅:840mm
重量:1000g
翼面積:18dm2(胴体部含まず)
ラジオ:5ch(ミニサーボ2、マイクロサーボ2、リトラクトサーボ1)

後に 6サーボとし1050g(引き込みサーボは通常のもの使用、OKのミニタイプはトルク不足というより歯飛びするため使用断念。ギヤ耐久性に劣ると感じるのは私だけか?)

 

 

 

 

<特徴>

・タンデム(自転車式)のメイン、ノーズギアゆえ翼端に補助輪を実機通り配置するが残念ながらこれは引き込まない。
・左写真の状態は車輪ダウンに連動して前縁、後縁フラップが下がっている。(この連動リンケージは死ぬほど苦労した)
・前縁フラップは翼端寄りに、逆に後縁フラップは胴体寄りに翼端失速を避けた実機通りの配置
・前縁フラップの翼端側に見える赤い線はボルテクスジェネレーターで効果のほどは不明ですが「気持ちが入ってます」

 

 

 

・主翼面積の22%を占める後縁フラップは模型故の低レイノルズ数考慮でダウン角度は控えめに根拠ないが約17度に設定。
・エレベーター(エレボン動作)をオールフライングではなく通常の分割式にしたのはやはり失速を避けるためと構造の簡素化、軽量化のため。
・エレベーター(エレボン)用ミニサーボは胴体にむき出しとしてリンケージしやすく配置。

 

・車輪出し、同時フラップダウンは離着陸モードとしコンピュータープロポ(F6)エアブレーキスイッチでエレベーターアップトリムになるよう設定(エレボンではなくフラッペロンミキシングとしてエアブレーキを使えるようにした)。これは大昔の作品F4ファントムのフラップ作動でのダウントリム現象より想定したもので後のフライトインプレで効果が証明された。
しかしながらマニュアルでギヤ引き込みスイッチとエアブレーキスイッチを同時切り替えするのは不合理。うまく連動する方法はないでしょうか?
・ラダーはノーズギアと連動と同時に、エルロン(エレボン)よりミキシングされ横操縦の補助とした(なにせ主翼ほどにはエレボンたる水平尾翼はスパン不足なので)。

 

 

・脚を引き込んで(前後縁フラップはアップ)ハイスピードモード。(車輪がはみ出ているのはご愛嬌)
・ペラがなければ結構いけるスタイルかな。

 

 

天の10月。新品OS15LAのブレークインをソコソコに済ませ、ゆっくりギャラリーを待つ。
おやっさんがきたところで各舵動作を再確認。最初は離着陸モードのエアブレーキアップトリムは止めておこう。
ではフルスロットルで滑走開始、そのままでは浮かない感じ、深くエレベーターを引くと15mほどでふわっと。ナンか変。異様に遅く、機首を上に向けず水平に平行上昇している。なんとも妙な離陸だが、大面積のフラップ効果で機首上げしなくとも軽量機体とあいまって必要揚力が得られたということか。
問題はその後。
エレベーターはフルアップに近い状態でなんとか上昇、エルロン(エレボン)は予想外に効いてくれたがいわゆる迷走飛行状態。ユーロファイター2000の初期飛行以来の緊張感、これだからやめられない。ギヤアップすると同時に前後フラップは戻るため多少素直になった、更にエアブレーキ(エレベータートリムアップ)をONするとひどかったダウントリムはだいぶ落ち着いており予想通りの展開。しかし旋回して頭上近くで翼を見ると前縁フラップがフラッターを起こしている。これまた心配していたが的中してしまった。
これは如何ということで、早々に着陸だがギアダウンするとフラップも下がるのでまたダウントリムに襲われるのは必至。どうするか考える間もなく条件反射でギヤダウンしスロットルを絞るとどんどん降下、エレベーターフルアップでも機首上げできない、スピンには入らないものの万事休すか。

軽いってのは相当なアドバンテージ。ペラを折っただけでほぼ無傷で回収できた。

完全なノーズヘビー、幾何計算での風圧中心プラス ダミーエアインテーク分を考慮し幾分(テールヘビー恐怖症でどうしても前重にしたくなる)重心を前進させたがやりすぎだった。
更に前縁フラップの剛性アップが必要。
次回はこれらを改修してトライ予定。楽しみ

 


カメラの具合が相変わらず悪く(設定かな?)不鮮明ですが飛んでます。
上記墜落のあと通算4回目で正常飛行にこぎつけました。紆余曲折を少々
<2回目の飛行>風圧中心に対し重心が異様に前進していた対策としてナンとテールに釣竿よろしく20cmほどオーパーハングさせ先端に250mAhのレシーバーバッテリーを搭載させバランスウエイトなしで重心設定、更に幾分エレベーターアップトリム。いざフルスロットルで一回目同様深いエレベーターアップで浮いた。
かなりあばれるが脚を引き込んでなんとか水平飛行にもっていきたいところだが第2旋回でローリング収拾つかず一回目とほぼ同じ場所へスピン墜落。
無傷とはいえこれほど難しい機体とはef2000より手ごわいかも。
スピン墜落の様子はNASA、X1でクローズアップされたイナーシャカップリングを連想する。
テールに伸びたバッテリーと機首のエンジンは胴体の慣性モーメントを大きくさせていたに違いなく、短い翼スパンと効きの悪いエルロンとあいまって回復できないスピンに陥った。

<3回目の飛行>
ここまでくると意地なってくるが、ウエイトによる重心設定は限界と感じ思いきって翼取り付け位置を30mm前進させる改造を行った。更にフラッターを起こす前縁フラップはピアノ線によるトルクチューブ方式をやめ直接引き込みサーボからラダーホーンを介しリンケージ。
三度目の正直なるか。だいぶ落ち着いた離陸にはなったが上空飛行でやはりロール安定悪く常にエルロン修正、最後はスピンこそ入らなかったが、エルロンの効きが悪く桃木に衝突中破。

<4回目の飛行>
ローリングテールでの横操縦はやはりモーメント稼げない分厳しく、離陸からピッチングに大きく影響するフラップダウンは問題と分析し大幅にリンケージ改造をおこなった。
@後縁フラップは引き込み脚との連動を止め左右独立サーボによるフラッペロンとし、任意にフラップ操作可能とした。
Aエレベーターは最後尾にミニサーボ搭載。
Bラダーサーボはノーズギア連動止め、後部に移動しエレベーターサーボ同様重心位置後退に貢献

 

4つのむき出しサーボはちょっと興ざめだが、フラップダウンで幾分エレベーターアップにミキシングし(普通はダウンだろうな)チャレンジ。

フルスロットル、エレベーターアップで難なく上昇。
エルロン効きはすこぶる。ピッチ、ロールともにトリム調整したあとは脚を引き込んで順調な飛行。
下半角の翼ながらきつい後退角の性か旋回での巻き込み感はない。
エルロンの効きが良すぎデュアルレートで調整。
アクロは次回に譲って、脚だしアプローチへ、かなり低速、高度1mくらいで深くエレベーターアップするとより低速でタッチダウン。僅かな滑走で停止。

なんだ飛ぶじゃない。これだからやめられない。
飛行機は見た目も大事だが、空力に磨きをかけ空飛ぶ掟に近づけるプロセスがこの上なく楽しい。マニアックかな。

でもハリアーは完成ではない。前、後縁フラップ効果を確認すべく次回へご期待。


<5、6回目の飛行>01.05.03

エアブレーキSwでフラップ、エレベーターミキシングを試す日がきた。
まずはフラップなしで順調離陸。エルロン、エレベータートリムもバッチリ脚引き込み高空へ。

安全高度で周回飛行の後スロットル絞っていよいよ脚出し(前縁フラップダウン)、後縁フラップダウン。すると一気に上昇。エレベータアップミキシングが強いか?
あわててフラップアップ。いま一度今度は十分機速を落としてからフラップダウン(エアブレーキsw)すると
いい感じ。スロットルをさらに絞ってゆっくりローパスへ。

おそい。

とてもジェットタイプとは思えない低速で滑走路へ進入してくる。
あまりの遅さに思いつきでタッチアンドゴー。
これだけ低速だと冷静に機体を追いかけられるので、タッチダウン寸前まで微妙にコントロールできる。
再びフラップアップでフルスロットル。
脚引き込み全速で周回ローパス。
それなりに速い。エルロンはデュアルレートでほどほどに切れよくロール、急旋回思いのまま。

再び脚出し、フラップダウン。どうやら機速が十分落ちれば今のエレベーターミキシング量がベストのようだ。
低空で周回飛行すると、ひいきめかもしれないがファンフライより低速。
見なれない異様な飛行にギャラリー(遠藤さん楽しんでいただけたかな?)、も多分変なやつと思ったに違いない。

エルロン→ラダーミキシングが効いたのかわからないがフラッペロンにしたことによるアドバーズドヨーは低速でも起きず当初の心配は消えうせた。
それにしてもまだ失速してない。横滑りしそうでしてない。

次回は失速の限界を見極め、さらに低速飛行を目指す。

6/10 高空でスロットルスロー十分減速したところで前後フラップダウン(ギヤダウン)。
じわりとエレベーターを引いていくと機首を持ち上げ苦しそう。引きすぎると横滑りを始めるそぶりでこの辺が限界と感じる。

次に前縁フラップをアップ(ギヤアップ)、後縁フラップダウンで減速し低速飛行を試みるが
エレベーターの引き具合はやはり限界が早い。しかも飛行の安定性が極めてよろしくない。

確実に前縁フラップの効果が認識できる。

これがこの機体の最大の付加価値、文献で調べた頭でっかちな知識でない
肌で感じるほんものの空力効果なんですね。

通常であればこれほどの低速では後退角の影響で翼端境界層の増加より翼端失速、さらには風圧中心移動によるピッチアップが起きても不思議でないがまったくその兆候はみられなかった。

前縁フラップと、これは今だまやかしかな?と思っているボルテクスジェネレーターの御かげと一人悦にいってるのでありました。 

今は一日に5回でも6回でも気楽に飛行できるまで熟成している。
超低速離着陸とスイッチ切り替えによる高速飛行移行と通常機では味わえない単なるスケールでもないアクロ一辺倒でもないニューカテゴリの機体になったのでした。

 

リアーの最期。
下の写真のような固定カナードをとりつけてみました。風圧中心はこれまでの対策でずいぶん前進していったのですが、まだ余裕ありそうでもっと低速飛行をと欲が出たのです。
結果はとても素直でまったく問題なくスロー&ファーストをこなしていたのですが、水平全速飛行中何の前触れもなく操縦不能となり、阿武隈川へ・・・
いまだに真相は不明ながらラジオトラブルとは思えないので、もしやカナードが外れかかってピッチング、ローリングに影響でたか?!
回収してみると中破程度で十分レストア可能と思えたがこれにて実験飛行は完結とします。お疲れ様でした。

ちょっと見にくいのですが、マフラーのちょっと後方に透明塩ビ板の固定カナード翼がついてます。

阿武隈川に浮かぶ情けない姿。

 

おわり

 

 

こんなでかいの作ってみたいものです。